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鳥取発の「あいサポート運動」って?鳥取県庁の職員さんにインタビューしました!【あいサポート運動×鳥取ぺんぎんVol.1】

みなさんは「あいサポート運動」という言葉を聞いたことはありますか?
「あいサポート運動」とは「障がいのある方もない方も、誰もが安心して暮らしやすい社会」の実現を目指して、様々な活動を行う運動のことです。

実は「あいサポート運動」は、平成21年の11月に、鳥取県から始まりました。現在はその輪が広がり、全国8県と23市町、その他3,000以上の企業などが参加しています。
そんな鳥取県から始まった「あいサポート運動」をもっとみなさんに知ってもらいたい、運動の輪を広げていきたいという思いから、「あいサポート運動×鳥取ぺんぎん」コラボ企画【あいサポ+ぺんぎんプロジェクト】が始動しました!

第1回目の今回は、「あいサポート運動」の活動内容や、研修のエピソードなどについて、鳥取県障がい福祉課の職員さんへインタビューを行いました。「一番小さな自治体が変化することで、大きな変化につなげたい」という職員さんの熱い思いや、活動の様子をお届けします。
みなさんも一緒に「あいサポート運動」の輪を広げましょう!
目次
「あいサポート運動」とは
「あいサポート運動」について教えてください。

「あいサポート運動」とは、障がいの特性を理解し、障がいのある方が困っているときにちょっとした手助けや配慮をすることで、「障がいの有無に関わらず、誰もが暮らしやすい地域社会を作っていこう」という取組です。

鳥取県から全国、さらには海外まで広がる「輪」
「あいサポート運動」は、鳥取県からスタートした活動と伺っていますが?

はい!実は「あいサポート運動」は、鳥取県から始まった活動です。2009年に鳥取県からスタートしました。
運動の輪は次第に地域を越え、現在では、全国8県17市6町、さらに韓国にも広がりを見せています。
昨年2024年は、「あいサポート運動15周年」を記念して、さまざまなイベントも開催しました。

鳥取県では、運動をさらに広げるため、2017年に「鳥取県民みんなで進める障がい者が暮らしやすい社会づくり条例」(通称:あいサポート条例)を制定し、県民全体で取り組むべき運動と位置付けています。
鳥取県は全国で人口最少の県です。一番小さな自治体が変化することによって、大きな変化に繋げていきたいという思いで取組を進めています。
ちなみに、現職の鳥取県知事・平井知事が、学生時代に日本赤十字社でボランティアを経験したことも、「あいサポート運動」が始まった背景の一つなんだそうです!
「あいサポート運動」を実践する「あいサポーター」とは
続いて、「あいサポーター」について具体的に教えてください。
「あいサポート運動」を実践していく方を「あいサポーター」と呼びます。

特別な資格やスキルは必要ありません。日常生活の中で、障がいのある方が困っている場面に遭遇したとき、声をかけたり、できる範囲で手助けをします。
意欲のある方なら、研修を受けることで誰でもなることができますし、自分のできる範囲で活動していくことができます。

「あいサポート運動」の活動内容は
鳥取県は、鳥取県社会福祉協議会と連携し、県民への普及活動としてさまざまな活動をしています。
あいサポーター研修
あいサポート運動を理解していただき、運動の輪を広げていくため、個別に学校や企業、公民館などからの依頼に基づき、個別にあいサポーター研修を開催しています。その他、「あいサポーター研修」の講師となる「あいサポートメッセンジャー」の養成講座も開催しています。
また、鳥取県民のみなさんどなたでも参加することができるよう、「あいサポーター研修公開講座」を東部地区、中部地区、西部地区でそれぞれ1回ずつ、年3回開催しています。
あいサポーター地域実践塾等
その他、共生社会への理解を深めるため「あいサポーター地域実践塾」も開催しています。障がいのある方もない方も楽しめるようユニバーサルスポーツ(ボッチャ、ラダーゲッターなど)などを体験していただけるもので、こちらも興味・関心のある方はどなたでも参加できます。

また、過去に実施した学校の先生方向けの研修では、座学に加えて「体験学習」にも力を入れて行いました。
例えば、注意欠陥多動性障がい(ADHD)のある方の感覚を理解してもらうために、VRゴーグルやヘッドフォンを使って、ADHDのある方の見え方、きこえ方、感じ方を体感してもらいました。
ADHDのある方の思考の変化や、聞こえてしまう音の存在を知ることで、『日常的に集中を維持することの大変さ』を理解してもらうためです。
なるほど!VRゴーグルを使えば、よりリアルに近い体験ができますよね!新しい技術やアイテムも取り入れながら、より良い研修へとブラッシュアップされているんですね・・・!
そうですね。このようなリアルな疑似体験などを通して、今後の関わり方や接し方に活かしていただきたいと考えています!
企業への啓発活動
また、企業様への啓発活動にも力を入れています。

例えば、飲食店やスーパーのようなお店であれば、お客さん用に車椅子用スロープが必要だったりしますよね。実は、「あいサポート運動」に参加してもらう(=あいサポート企業になる)ことで、車椅子用の簡易スロープを購入するための補助金の補助率が上がる場合があります。
企業側としては、お客さんをより多く取り込めるようになるので売上向上に繋がり、障がいのある方は買い物ができるお店の選択肢が広がります。このように、双方にとって良い方向に繋がることで、地域そのものが活性化すればいいなと考えています。

「あいサポート運動」を通して実現したい社会とは
「あいサポート運動」を通して、どのような社会を実現したいと考えていますか。
私たちが目指すのは「共生社会(障がいのある方もない方も共に生きる社会)」の実現です。
従来の障がい者に対する啓発活動は、座学形式の研修が中心で、知識の習得に重点が置かれていました。しかし、私たちは「座学研修だけでは社会は変わっていかない」と考えています。

研修を受けたり講演会に参加することで、障がいの特性や、障がい者の方が普段どんな不便を感じながら暮らしているのか、などという知識は増えますが、そこで終わっては社会を変えることはできません。
「あいサポート運動」では、障がいの特性を理解し、その理解をもとに「共生社会の実現」へと向かっていくことが大切だと考えていますので、座学に加えて体験や交流などを通じ具体的な行動に繋げていくよう推進することにも重きを置いています。
例えば、ちょっとした手助けをするにしても、何に困っているか聞く、声をかけることが、最初の行動になるのではないかなと思います。まずは、挨拶からでもいいと思います。
ひとりひとりの意識が変わり、それぞれが少しずつでも行動に移すことで、私たちの目指す社会が実現できると考えています。
確かに、知識を習得するだけだと、頭ではわかっていても、どう行動に移せばいいかわからないことがありますよね。知識だけでなく、具体的な行動に繋がるように示してくださるのはありがたいですね・・・!
今後も、より実践に活かしてもらえるような研修にしていきたいと考えています!
当事者の方との交流を深められるような実践的な研修を取り入れることで、参加した方が、自信を持って手助けや配慮ができるような研修にしていきたいですね。
職員さんにQuestion!:「活動を通して感じた変化」は?
あいサポート運動に取り組むようになって、ご自身になにか変化はありましたか。

(加藤さん)街を歩いているときに、点字ブロックが途切れている所やオストメイトトイレの設置状況を意識するようになりました。点字ブロックの欠損は、視覚障がいのある方にとって、いきなり道が無くなってしまうようなものなので、歩いていて、とても不安になると思うんです。
このように、「今まで気にならなかったことに気づくようになった」ことが一番大きな変化だと感じています。
普段の日常生活のなかでも、新たな気づきが生まれるようになったのですね・・!
そうですね。これまであまり気にしたことはなかったのですが、「あいサポート運動」に取り組むようになってから、自然と注意が向くようになりました!
(湯浅さん)私は情報保障に対する意識が変わりました。以前は、情報発信をする際に、チラシを作って配布するだけで十分だと考えていましたが、「あいサポート運動」を通して、視覚障がいのある方など、すべての人に伝わるように工夫しないといけないと思うようになりました。
なるほど。確かに、今では音声案内など様々な情報伝達手段があるので、そういった工夫をすることで、より多くの方に情報が届けられますよね!
そうですね。実際に「あいサポート運動ハンドブック」にも、目の見えない、見えにくい方のための音声コードが付いていますよ!
今後の展望について
「あいサポート運動」の今後の展望について教えてください。
鳥取県は全国でも珍しい、「あいサポート運動」の条例が制定されている自治体です。それでも、県民の方からの認知度はまだまだ十分とはいえません。
『「あいサポート運動」という名前は知っている』、『マークとかバッジは見たことあるけど、具体的に何をするのか分からない』という方を一人でも減らしていけるように、推進していきたいです。
また現在は、子ども向け教材の作成にも取り組んでいます。それを学校現場でも活用していただき、この教材を通じて、鳥取県では小学校で必ず「あいサポート運動」について学ぶ機会を設けることを目指しています。

学校で「あいサポート運動」について学ぶことで、将来の社会を担う子どもたちが、共生社会の大切さを自然と理解し、実践していくことができるようになると考えています。今後も学校と連携していきながら、進めていきたいと思っています。
小さい時から、障がい者の方への理解を深めたり、助け合いの意識を持つことが大切だと思っています!
「とっとり若者活躍局」という、高校生から30代くらいまでのメンバーが集まるグループと連携し、県内の大学生にも研修を受けてもらうような動きも出てきています。今後も、若い世代にも参加してもらえるような取組を活発化させていきたいです!
私たちにできること
まだ、あいサポート運動を知らない方へのメッセージ

あいサポート運動は、困っている人がいたら手を差し伸べる、そんな思いやりのある社会の実現を目指しています。まずは周りの人に目を向け、困っている人に気づくことが大切です。
第一歩として身近な存在、家族や友人、近所の人とのコミュニケーションを大切にしてほしいです。「こんにちは」や「天気いいですね」など何気ない会話でも構いません。周りの人に関心を持つことが始めの一歩です。
あいサポート運動を知っている方へのメッセージ

「ちょっとした手助け」のための「小さな勇気」を持ってほしいと思います。研修を受けて活動の実態を学んでも、いざとなったら何をしたらいいのか分からない、という方は多いです。
目の前に白杖をついて歩く視覚障がいのある方がいる、スーパーで車椅子を使って買い物している方がいる。それ以外にも、困っている障がいのある方がいるとき、何をしたらよいかわからない方もおられると思います。
そんな方も「まずは声かけから始めてほしい」と考えています。挨拶でもいいです。
白杖をついている方と歩道ですれ違うとき、「こんにちは」と声をかけてみてほしいです。
やり取りのきっかけさえ掴めば、どんなニーズがあるのか、どんなことで困っているのか知ることができますから。
「あいサポ+ぺんぎんプロジェクト」について
今回より、「あいサポート運動」と「鳥取ぺんぎん」がコラボし、【あいサポ+ぺんぎんプロジェクト】が始動しました!
本プロジェクトは、「障がいの有無に関わらず、誰もが暮らしやすい地域社会」づくりを目指す「あいサポート運動」と、就労支援事業所Nextepが運営する「鳥取ぺんぎん」がコラボし、みなさまに「あいサポート運動」の活動内容や、「あいサポーター」や「あいサポート企業」へのインタビューなどをお届けする企画です!
第一弾の今回は、就労支援事業所Nextepの利用者さんが、実際に鳥取県庁職員さんへインタビューを行った内容をお届けしました。


「障がい者の方が働きやすい世の中に、鳥取市をもっと豊かに。」そんな想いから始まった鳥取ぺんぎんは、引き続き「あいサポート運動」の発展に微力ながら貢献していきたいと考えています。
ぜひとも、本プロジェクトの応援、よろしくお願いします!