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鳥取市が実施している不妊治療助成制度について。県独自の取り組みと併せて紹介
鳥取市には、不妊治療への助成制度として不妊検査費の助成、不育検査費の助成、保険適用外になる女性に対する県独自の補助金制度があります。
また2024年度からは、全額自己負担で治療に当たらなくてはならない方に対し、最大30万円が県より助成される助成制度もはじまりました。これは、全国に例のない画期的な取り組みとなっています。
今回は、不妊検査費、不育検査費、不妊治療費の各詳細や、どんな方が助成金の対象になるのかについてまとめました。
鳥取市の不妊治療に対する助成金詳細
鳥取市が実施している不妊治療に対する助成金制度は全部で4つあります。
- 不妊検査費助成
- 特定不妊治療費助成
- 不妊治療費助成
- 温存後生殖補助医療に対する研究推進事業助成
それぞれの制度の概要や申請可能な金額について見ていきましょう。
不妊検査費助成
不妊検査とは、妊娠を望みながら一年以上妊娠しない状態が続いている健康な男女に対して、その原因を探るために実施する一連の検査の総称です。一年以上という期間は日本産婦人科学会によって「不妊」の定義の一つに規定されたものです。
実際に行われる不妊検査の例です。
女性
- 子宮、卵巣の超音波検査(ガンや筋腫がないかどうか)
- 血液採取によるホルモン検査
- 腹腔鏡、子宮鏡検査(全身麻酔を使用)
- MRI検査(断面画像を撮る)
男性
- 精液検査
- 泌尿器科敵検査
- エコー検査
- ホルモン検査
- 染色体遺伝子検査
男性の不妊要因は全体の50%程度に当たると考えられており、女性の不妊検査に対して体への負担も少ないため、不妊検査は男女揃って行うことが推奨されています。
鳥取市の助成制度では、「保険適用になる検査以外にかかった費用」に対して、最大で1組当たり26,000円が助成されます。
次の全てに該当する方が、対象となります。
- 法的な婚姻から3年以内、または事実婚の状態で妻が35歳未満の夫婦
- 検査開始時に妻が43歳未満であること
- 男女ともに初めて受ける不妊検査であること
- 鳥取市、岩美町、八頭町、智頭町に住所があること
より詳細な内容はこちらよりご確認ください。
特定不妊治療費助成
特定不妊治療とは、体外受精か顕微授精による治療以外に妊娠の見込みがないか、確率が非常に低いと判断される男女に行う不妊治療です。一回にかかる費用が高額になるため、経済的な問題で治療を受けられないカップルが多いことが問題となっています。
鳥取市では、特定不妊治療が必要な法的夫婦、事実婚関係にある夫婦の妻が43歳以下である場合の年度内の特定不妊治療に対し、1回当たり上限50,000円が支給されます。
この1回とは、胚移植のことを指していますが、胚移植まで至らなかった場合にも助成金の対象です。
より詳細な内容はこちらよりご確認ください。
鳥取市不妊治療費助成
鳥取市では、保険診療および自費診療によって行われた着床前検査、またはその後で追加で実施された不妊治療にかかった費用に対し、県助成費を控除した上限額が以下の通り助成されます。
- 着床前検査 50,000円
- その後の追加治療 100,000円
- 追加治療のうち凍結胚移植の場合のみ50,000円
凍結胚移植とは、ガン治療などで生殖能力に危険が生じる女性に対し、一度受精卵や胚を取り出して特殊な方法で冷凍保存し、病気を克服した後で妊娠出産を目指す治療法です。
しかし、凍結している間のダメージによって胚が変性したり、着床率が低くなるリスクがあるため確実な不妊治療とはいいきれません。
助成金の対象となる方は下記の条件をすべて満たす方となります。
- 鳥取市に住所があること
- 令和6年4月1日以降に治療終了として不妊治療助成金交付事業の交付決定を受けた方
他の助成金では東部地区全体が対象であるものもありますが、不妊治療に対する助成の対象は鳥取市に住所があることが条件です。注意してください。
より詳細な内容はこちらよりご確認ください。
不育症検査費等助成
妊娠してから22週(妊娠5〜6ヶ月ごろ)までにお腹の中で赤ちゃんが亡くなってしまうことを流産といいますが、流産及び死産(23週以降に胎児が亡くなること)が続けて2回以上起こることを不育症と呼びます。
流産は多くの場合染色体異常など先天的なものとされます。しかし不育症の原因はまだ研究が進んでおらずはっきりしたことは分かっていません。
鳥取市では、流産または死産を2回経験した女性に対して、検体を用いた遺伝子検査を行っています。そしてそのために必要な費用を、1回当たり上限6万円(費用の7割分)支給します。
対象は以下の通りです。
- 申請時に住所が鳥取市および岩美町、若桜町、八頭町、智頭町のいずれかにあること。
- 他の自治体から不育検査の助成金を受けていないこと
- 検査結果を国に提出することに同意すること
3つ目の条件は、今後の不育症研究のために必要な措置と思われます。流産や死産は女性の心と身体に大きな負担をかけます。同じ症状に苦しんでいるお母さんのためにも、ぜひ協力していただきたいと思います。
より詳細な内容はこちらよりご確認ください。
鳥取県が行う独自の不妊治療助成
2024年度より、鳥取県は年齢や不妊治療の実施回数によって保険適用外となってしまった女性に対し、それ以降も治療を続ける場合、1回あたり30万円を助成しています。
これは全国的にもかなり高額な助成金制度であるとともに、妊娠・出産に成功した後で再び不妊治療に臨む場合は、治療の上限回数がリセットされるという点も非常に画期的です。
通常、不妊治療の保険適用は、40歳未満の女性であれば人工授精や体外受精が最大6回、40〜43歳の女性なら最大3回までとされています。
しかし、6回目以降の治療によって妊娠出産に成功した例も少数ながらあるようです。
わずかでも可能性のある女性にチャンスを与えるために、今回の独自の助成制度が制定された背景があります。
出産を諦めたくない方のための助成金制度
鳥取市と鳥取県が実施している不妊治療の助成金制度について解説しました。不妊症や不育症の原因ははっきりしたことがわからないため、全く問題のない健康なカップルでもなかなか妊娠に至らないという例も少なくありません。
また子どもを望む女性にとって、何度も流産や死産を繰り返すことは非常に苦痛です。不育症検査への助成金制度があることも、多くの方に知っていただきたいと思います。
県が実施した新しい助成金制度は、市の助成対象外となった方へのセーフティネットにもなるでしょう。子どもを諦めたくないというカップルの方は、ぜひ申請を検討してみてください。