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朝ドラ『ばけばけ』と鳥取の怪談〜小泉八雲とセツが聞いた“布団の話”〜
朝ドラ『ばけばけ』で話題の小泉八雲とセツ。実は、二人の新婚旅行先・鳥取市には「布団の話」という怪談の舞台がありました。旧鳥取藩との縁と共に、その不思議な物語を探ります。
朝ドラ『ばけばけ』で注目される小泉八雲とセツ
現在放送中のNHK朝ドラ『ばけばけ』。
異国の文豪・小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)と、日本女性・小泉セツの絆が描かれ、話題を集めています。
彼は怪談作家として知られていますが、その本質は「人の情」を見つめた温かなまなざしでした。そして、その繊細な感性を日本語や文化の壁を越えて支えたのが、妻・セツの存在です。そんな二人の背景には、実は鳥取との深い縁が隠れているのです。
セツの元夫は旧鳥取藩士の家係
セツが八雲と出会う前、最初の結婚相手は旧鳥取藩士の家柄・前田為二(ためじ)でした。
鳥取藩は、江戸時代に池田家が治めた因幡の国(現在の鳥取県東部)を中心とした地域です。為二との結婚生活は長くは続かず、彼が出奔した後に離婚。若くして夫を失ったセツは苦労を重ねながらも、誠実さと芯の強さを失いませんでした。
やがて、異国から来た教師・ラフカディオ・ハーンと出会い、運命の糸が結ばれます。
八雲とセツの新婚旅行×鳥取の怪談話
八雲とセツが結婚後、1891年に新婚旅行で訪れたのが鳥取の浜村温泉(現・鳥取市気高町)。
その滞在中、八雲は旅館の女中から一つの怪談を聞きます。
それが後に『怪談』に収められた名作「鳥取の布団の話」です。
鳥取の布団の話
この話はこう始まります。
鳥取町の小さな宿屋に、一人の旅人が泊まりました。

夜中、布団の中から子どもの声が聞こえてきます。「兄さん寒かろう」「お前も寒かろう」。
驚いた旅人が調べると、その布団は貧しい兄弟が最後の夜を過ごしたものでした。
宿の主人は彼らを哀れに思い、その布団を寺に運び、供養を行うと、声は二度と聞こえなくなったそうです…。

この物語は、単なる恐怖譚ではありません。
死してなお寄り添う兄弟の絆、そしてそれを見守る人々の慈しみ。
八雲はそこに、“日本人の心の奥にある優しさ”を感じ取ったのです。悲しくも温かい、魂のやすらぎを描いたこの怪談は、今も八雲の代表作の一つとして読み継がれています。
そして舞台となった浜村温泉では、この怪談をモチーフにした映画が制作され、来年3月の浜村温泉映画祭で上映予定といいます。
湯けむりに包まれた温泉街が、再び「ばけばけ」の世界と重なり合うようです。
鳥取を訪れるなら、ぜひ気高町・浜村温泉へ。夜風にそよぐ湯けむりの中、八雲とセツが聞いた「鳥取の布団の話」の余韻を感じてみてください。
まとめ
・セツの最初の夫・前田為二は旧鳥取藩士の家系。
・八雲とセツは新婚旅行で鳥取・浜村温泉を訪問。
・「鳥取の布団の話」は浜村温泉が舞台の怪談。
・朝ドラ『ばけばけ』とともに、鳥取も“もう一つの舞台”として注目。