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鳥取市でライドシェアが試験運用されます。期間と独自の特徴について解説
鳥取市、とくに中心市街地や山間部で高齢者を中心に深刻なのが「車がないとなにもできない」という問題です。
中心市街地は駐車場が確保できていない店舗が多いですし、山間部は自家用車しか移動手段のない高齢者家庭が少なくありません。
解決策として全国的に注目されているのが、ライドシェア事業です。しかし、いきなり知らない人の車に乗る、いきなり知らない人と相乗りすることへの抵抗が大きいことが課題です。
この度、10月のねんりんピック開催期間5日間を限定に、鳥取市でもライドシェアが試験運用されます。
今後鳥取市でライドシェアが定着するのかどうかを図る、重要な取り組みになりそうです。観戦したいけど駐車場に車が停められるか不安、という方はぜひ体験してみてください。
鳥取市ライドシェアサービスの実施計画
鳥取市のライドシェアは、「コミュニティ・ドライブ・シェア」または、「鳥取型ライドシェア推進事業」として2023年11月の県議会で補正予算が可決されました。
目的は、バス路線が無い、あるいは廃線になった、またはタクシー事業者が撤退してしまったなどの「交通空白地域」に住む人たちに、デマンドバスや民間ドライバーを派遣することで、移動の問題を解決することです。
この鳥取型ライドシェアは、2024年10月19日~22日の4日間と前日の懇親会の日を合わせた5日間、ヤマタスポーツパークをメイン会場として開催される「ねんりんピック」期間限定で試験的に運用されることが2024年5月30日に発表されました。
限定的な運用のため、ねんりんピック各競技が行われている場所への選手の移動、県外からの観客やスタッフが空き時間に周辺の観光地を訪れることが目的です。
ねんりんピックはコロナ終息後の久しぶりの開催ともあって、選手、観客、スタッフの動員数が約40万人と見込まれています。予想される当日の混雑と駐車場やタクシーの不足を鑑みて、試験運用の素材として適していると判断されたようです。
ねんりんピックとは
正式名称「全国健康福祉祭」といって、主に60歳以上の参加者によってさまざまなスポーツ競技や文化活動を開催する全国大会です。
高齢者の健康増進、生き甲斐作り、いくつになっても積極的な社会参加を、などの目標を掲げ1988年に第一回大会が開かれました。
その後、全国の都道府県で年に一回開催されてきましたが、2020年以降のコロナウィルス感染症拡大の影響で、中止や延期が繰り返されています。
2024年鳥取大会は、約4年ぶりの大会ということもあり、期待と意欲に燃えて参加に臨む選手の数も多くなることでしょう。見応えのある試合となることが予想されます。
詳しくはこちらの記事を参考にしてください。
鳥取型ライドシェアの具体例
2024年現在計画されている鳥取型ライドシェアの具体例は主に以下のようなものです。
- 民間ドライバーが自家用車でお客の送迎を行う場合の研修実施や後部座席との仕切りの設置費用の助成
- ドライバーは役場職員と地域住民を合わせて20名程度の採用を予定
- 採用されたドライバーは4時間〜5時間を1シフトとして交代で勤務。1シフトに対し3,500円が謝礼として支払われる
- 観光施設が無償でお客の輸送を行う場合、保険料や燃料代を助成する
- 市町村が運行するデマンドバスの車体購入やドライバーの免許取得の費用を助成
- タクシー会社に対し相乗り促進のために必要なシステム構築に関わる人件費や燃料代の助成
デマンドバスとは、乗客の需要に合わせてバスを運行する路線バスとタクシーの要素を合わせた公共交通です。たとえば、毎週この時間に買い物に行きたい、病院に行きたいという地域の方からの要望を受けてバスの運行ルートや時間を設定します。
東京都などで導入されたライドシェアは、一般ドライバーがタクシー会社に雇用され、運行計画に従って自家用車でお客を送迎するものです。いわゆる日本版ライドシェアと呼ばれる事業です。
鳥取型ライドシェアが異なる点は、自治体主導のもと地元企業、地域住民など官民協働の事業として計画されることにあります。
従って、首都圏や都市部では「隙間時間のアルバイト」感覚で取り組めますが、鳥取型はむしろ有償ボランティアとしての特徴が強いといえます。ドライバーとして収入を得る、という参入は現状では難しいようです。
ただ、2024年5月30日の鳥取県知事定例会見での質疑応答によると、将来的に鳥取県全体で民間タクシー会社と提携した「日本版ライドシェア」を導入する準備は、県議会等ですすめられているようです。
ライドシェアの活用法及びドライバーとして参入する方法
2024年8月現在では、コミュニティ・ドライブ・シェアをどうやって利用するのか、またはどうやってドライバーとして応募するのかについて具体的な基準は策定されていません。
ねんりんピック終了後に得られるデータを元に、民間タクシーとの連携方法や運行計画の立て方などを県議会で議論されると考えられます。
そのため、鳥取型ライドシェアが身近な交通手段として鳥取市内に定着するかどうかはあくまで未定としかいえません。
だからこそ、県外からの観光客と合わせて市内在住の方も、モニター体験の感覚で積極的に利用することが重要です。
鳥取型ライドシェア利用上の注意点
鳥取型ライドシェア最大の課題は、運用や利用の具体的な形がほぼ未定ということです。鳥取市でのライドシェアはまだ計画段階であり、だからこそねんりんピックでどんな効果を発揮するのかが注目されます。
また、乗客間トラブルをどう予防するのかなどの課題も残されたままです。とはいえ、全国ハイヤー、タクシー連合会の調べによると、全国で起こるタクシー強盗の件数は年間100件ほど、しかも年々減少傾向にあり検挙率も上がっています。
マナー違反の乗客が0ということはできません。しかし、ルール規定が整備されていくことで解消できる問題も増えるかもしれません。近い将来鳥取市周辺でも、安全で新しい公共交通として成長することに期待が寄せられます。